社会福祉士の仕事内容や就職先などを取り上げつつ、国家試験を受けるまでの流れと試験内容について解説します。
はじめに、社会福祉士の定義と仕事内容と就職先を紹介します。
社会福祉士の仕事内容
社会福祉士とは社会福祉の専門家です。
1987年制定の「社会福祉士及び介護福祉士法」によって誕生した国家資格で、「ソーシャルワーカー」とも呼ばれることもあります。
「社会福祉士及び介護福祉士法」の第2条を参照すると、社会福祉士について次のように定義されています。
専門的知識と技術で、身体的・精神的・経済的なハンデを持つ人の福祉に関する相談に応じ、支援の対象者と福祉サービスや医師など周囲との連携や調整・相談を行なう役目を担うもの
e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」
つまりは、人々から相談を受け、周囲と連携を取りながら調整を行なうのが、社会福祉士のおもな役割といえるでしょう。
社会福祉士の就職先は、都道府県の福祉事務所や社会福祉協議会をはじめ、特別養護老人ホーム・児童相談所・障がい者施設など多岐にわたり、幅広い現場で求められています。
支援の内容と職種職場
それでは、支援対象ごとの具体的な支援内容を紹介します。
施設を利用、もしくは施設で生活する高齢者とその家族を対象に、施設利用や福祉サービスなどの相談支援を行ないます。
高齢者を支援する場合の勤務先には、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの各種介護施設、地域包括支援センターなどが考えられるでしょう。
その場合には、生活相談員やソーシャルワーカーとして活動しているようです。
身体障がい者・知的障がい者とその家族を対象に、相談業務を行ないます。自立支援や就労支援などがおもな業務です。
障がい者を支援する場合は、障がい者支援施設、就労継続支援施設、グループホームなどで、生活相談員・作業支援員として勤務します。
近年は、学校内にスクールソーシャルワーカーを置かれるケースがあります。スクールカウンセラーのように子どものカウンセリングを行なうだけでなく、家族を含めた周辺環境への働きかけも行なうのが特徴です。
その他には、児童相談所、児童養護施設、母子生活支援施設、障害児入所施設などに、児童福祉司、母子相談員として勤めることもあります。
これらの施設で、身体的・精神的にハンデがある子ども、親の養育が受けられない子ども、不良行為に関わる子どもやその家族の支援を行ないます。
上記以外に、医療機関、社会福祉協議会などの地域福祉施設、少年院や更生保護施設などの司法関係機関といったさまざまな分野で、社会福祉士は活躍しています。また、社会福祉士として独立型事務所を開くことも可能です。
社会福祉士の年収はどのくらい?
社会福祉士は幅広い施設で求められる職業ですが、年収はどの程度なのでしょうか。
社会福祉士試験を行なう、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの調査によると、2019年度の社会福祉士全体(性別・年齢問わず)の平均年収は403万円です。
男女別では、男性の平均年収が473万円、女性の平均年収が365万円となっており、108万円もの差があります。
また、年代別では50代が最も高く、平均年収は472万円(男性・女性・性別無回答の平均値)となっています。
参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士 就労状況調査(令和2年度)結果報告書」
社会福祉士の資格を取るまでの流れ
社会福祉士
社会福祉士国家試験の受験資格に触れつつ、国家資格取得までの流れを紹介します。
福祉系大学・短大
福祉系大学・短大から社会福祉士を目指すには、次の2パターンがあります。
指定科目履修の場合
文部科学省・厚生労働省令で定められた「指定科目」を履修していれば、四年制大学卒業後に社会福祉士国家試験を受けられます。
短大の場合は、卒業後に相談援助実務経験を1~2年積むと、受験資格を得られます。
基礎科目履修の場合
文部科学省・厚生労働省令で定められた「基礎科目」を履修した場合は、四年制大学卒業後、短期養成施設などに6ヵ月以上通うことで受験資格を得られます。
短大の場合は、短大卒業後に相談援助実務経験を1~2年積み、短期養成施設などに6ヵ月以上通えば受験可能です。
基礎科目は「社会調査の基礎」など12科目があります。
一般の大学・短大
福祉系ではない一般の大学を卒業した場合は、卒業後に一般養成施設などへ1年以上通えば受験可能です。
短大の場合は、卒業後に相談援助実務経験を1~2年積み、一般養成施設などへ1年以上通えば受験資格を得られます。
社会福祉主事養成機関
社会福祉主事養成機関を修了した場合は、相談援助実務経験を2年積み、短期養成施設などに6ヵ月以上通えば受験可能です。
5職種の実務(査察指導員など)
児童福祉司・査察指導員・知的障害者福祉司・身体障害者福祉司・老人福祉指導主事の5職種の実務を4年以上経験した場合は、短期養成施設などに6ヵ月以上通うと受験可能です。
相談援助業務(実務経験)
相談援助実務を4年以上経験した場合は、一般養成施設などへ1年以上通うと、受験できます。
短期養成施設・一般養成施設とは?
受験資格で指定されている短期養成施設・一般養成施設とは、福祉系の専門学校などです。どの学校がこれに該当するかは、以下のページでご確認ください。
短期養成施設の履修期間は9ヵ月もしくは11ヵ月となっており、全国14ヵ所(※2021年4月1日時点)で、すべて通信課程で対応しています。
一般養成施設は全国に数多くあり、カリキュラムは通信課程、昼間・夜間課程など学校によって異なります。履修期間も1~2年と幅があるので、ご自身に合った養成施設を選びましょう。
社会福祉士国家試験の試験科目や難易度
最後に、社会福祉士国家試験の概要と試験科目、合格率などを紹介します。
社会福祉士国家試験の概要
社会福祉士国家試験は年1回、毎年2月に行なわれます。受験手数料は1万9,370円(社会福祉士のみ受験の場合)で、東京・大阪・福岡など全国24ヵ所で受験できます。
試験形式は筆記試験のみですが、複数の選択肢から正しい答えを選択する多肢選択形式です。
受験資格は、先に述べた「受験までの流れ」でも解説しましたが、以下をご確認ください。
- 4年制大学で指定科目を修めて卒業した方(令和4年3月31日までに卒業見込みの方を含みます。)
- 2年制(又は3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(又は1年以上)相談援助の業務に従事した方(令和4年3月31日までに従事する見込みの方を含みます。)
- 社会福祉士短期養成施設(6月以上)を卒業(修了)した方(令和4年3月31日までに卒業(修了)見込みの方を含みます。)
- 社会福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した方(令和4年3月31日までに卒業(修了)見込みの方を含みます。)
社会保険福祉士の試験科目以下の19科目(18科目群)です。「就労支援サービス」と「更生保護制度」は、あわせて1科目群として扱います。
人体の構造と機能及び疾病
心理学理論と心理的支援
社会理論と社会システム
現代社会と福祉
地域福祉の理論と方法
福祉行財政と福祉計画
社会保障
障害者に対する支援と障害者自立支援制度
低所得者に対する支援と生活保護制度
保健医療サービス
権利擁護と成年後見制度
社会調査の基礎
相談援助の基盤と専門職
相談援助の理論と方法
福祉サービスの組織と経営
高齢者に対する支援と介護保険制度
児童や家庭に対する支援と児童家庭福祉制度
就労支援サービス
更生保護制度
1~11までの科目までは精神保健福祉士と共通科目なので、同時受験も可能です。
精神保健福祉士国家試験については、こちらで紹介しています。
精神保健福祉士国家試験の対策方法は?合格率や難易度も合わせて解説!
「精神保健福祉士の仕事に興味があるけれど、どのような勉強をすれば良いのかわからない」あるいは、「国家試験に合格するためには、どのような対策をすれば良いのだろう」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
社会福祉士の合格基準は、総得点の60%が目安とされます(難易度による補正あり)。さらに、全科目で得点していなければなりません。
試験の難度は高く、近年の合格率は25~30%程度となっています。例えば、2021年2月に行なわれた第33回の試験では、合格基準点は93点、合格率は29.3%となっており、10人中3人程度しか合格できない計算になります。
社会福祉士国家試験の過去問は、試験を実施する公益財団法人社会福祉振興・試験センターのウェブサイトで公開されています。過去問対策をしっかり行って、合格を目指しましょう。